生方 英幸

消化器外科 准教授
生方 英幸

胃がんの現状

胃がんで死亡する人は、年間約5万人といわれ、長らく日本人のがん死亡の第1位の座を占めてきました。しかし、近年減少の一途をたどっており、現在ではがん死亡の1位は肺がんで、胃がんは2位になっております。それでは肺がんになる人の数は胃がんになる人よりも多いのでしょうか。答えは否で、胃がんになる人の方が多いのです。ということは、胃がんは決して治りにくいがんではなく、特に最近の日本においては優れた治療法が行われていることの証明になるのではないでしょうか。

胃がんの原因

有名なのはピロリ菌感染によるものですが、ここに塩分の過剰摂取が加わると発がんしやすくなるといわれております。ピロリ菌は、ほとんどが幼少時の感染で、衛生情況の改善と乳児への食べ物の口移しが減少することにより感染率を下げることができます。そのほか、ウィルスやたばこなどが関係しているといわれています。

胃がんの種類

大きくわけて分化型がんと未分化型がんとあり、特に後者は小さくてもリンパ節に転移をすることがあり注意が必要です。早期胃がんとは粘膜の浅い層である粘膜下層までのがんで、それ以上深い層に浸潤しているがんを進行がんといいます。この分類よりもこれにリンパ節転移、血行性転移、腹膜転移の要素を加えたステージ分類(軽い方からT〜IV期)の方が、生存率を良く反映していると考えられます。

胃がんの治療方法

中心となるのは外科的開腹手術ですが、あまり進行していない胃がんに対しては、内視鏡的治療や、虫垂炎(いわゆる盲腸)と同じくらい小さな創しか残らない腹腔鏡手術の適応があります。当科では、特にこの手術に力を入れておりますのでご相談下さい。進行している胃がんに対しては化学療法、免疫療法、放射線療法が選択されることがあります。ステージTであれば5年生存率は90%以上であり、早い段階で発見されることが最も重要です。

症例提示

忘れられない症例を提示します。図1は初診時の胃内視鏡所見です。胃の出口近くに小さな分化型の胃がんがあり、内視鏡的切除を勧めました。しかしちょうどその頃、がんと戦ってはいけないという本がベストセラーになった時期で、この患者さんは再三の説得にも関わらず、すべての治療を拒否されました。その結果、6年半後、図2のような大きな進行がんとなりがん死してしまいました。図1の段階から2年後くらいまでであれば、腹腔鏡手術の治療でがん死することは無かっただけに痛恨の症例となってしまいました。

図1 初診時胃内視鏡所見
胃の出口に小さな分化型がんがある。(矢印)
図2 6年半後の胃内視鏡所見
大きな全周性進行胃がんとなった。
早期発見のために

胃がんで死なないためには治せる段階で発見されることが必要です。そのためには、症状のない状態で検査すること、すなわち検診を受けることが重要です。しかし、検診の受診率は低く、10%前後といわれなかなか増えてきていないのが現状です。われわれも検診の重要性をさらに強調していかなければなりませんが、皆さんもがんで死なない努力をもっと行ってほしいと思います。

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